妊娠中はなぜ歯ぐきが腫れやすい?ママと赤ちゃんを守るための歯周病対策ガイド

妊娠中の歯ぐきの腫れがケア不足ではない理由と正しい対処法を解説したアイキャッチ画像 妊娠中・マタニティー歯科

妊娠中はなぜ歯ぐきが腫れやすい?ママと赤ちゃんを守るための歯周病対策ガイド

🦷この記事は科学的根拠に基づいた論文を元に作成、臨床現場での経験談も含まれています。

  1. 妊娠するとお口のトラブルが起きやすい理由
  2. 歯周病が妊娠に与える影響(科学的根拠)
  3. 私が臨床で見てきた「妊娠中のお口の変化」
  4. 妊娠中にできるセルフケア
  5. 歯科医院で行うプロフェッショナルケア
  6. FAQ
  7. まとめ

妊娠するとお口のトラブルが起きやすい理由

妊娠中は女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)が急激に増えます。この変化がお口にも影響します。

主な変化は次のとおりです。

  • 歯周病菌が増えやすくなる
     女性ホルモンを“栄養”にして増える細菌がいるため、炎症が起きやすくなります。
  • 唾液量の減少
     唾液が減ると、自浄作用(口の中をきれいに保つ力)が弱くなります。
  • つわりで歯が磨きにくい/食生活が乱れる
     酸味のある食品・間食が増え、むし歯・歯肉炎リスクが上がります。

こうした理由から、妊娠中は「妊娠性歯肉炎」が生じやすいと言われています。
実際、研究では 妊婦さんの約50〜70%が歯肉炎を経験する と報告されています(ACOG・ADAなど国際的ガイドラインより)。


歯周病が妊娠に与える影響(科学的根拠)

複数のレビュー論文やメタアナリシスでは、歯周病がある妊婦さんは次のリスクが高くなる可能性が示されています。

  • 早産
  • 低体重児出産(LBW)
  • 妊娠合併症の増加

メカニズムとしては、

  • 歯周病による炎症物質(IL-6、TNF-α)
  • 歯周病菌の内毒素(LPS)

これらが血流を通じて子宮へ影響し、子宮収縮を促しやすくなる可能性が指摘されています。

※ここで強調したいのは、
「因果関係が完全に確立されたわけではないが、関連性が強く疑われている」という立場が、近年の大規模レビューの主流です。

つまり、
“完全には証明されていないが、可能性が高いので予防する価値が非常に高い”
というのが専門家の共通認識です。



私が臨床で見てきた「妊娠中のお口の変化」

妊娠してから急に歯ぐきが腫れた患者さんはとても多いです。
普段は歯肉炎とも無縁だった方でも、妊娠をきっかけに、

  • 歯ぐきが赤く腫れる
  • ブラシが当たるとすぐ出血する
  • 今まで取れていた汚れが取りづらい

といった変化が一気に出ることがあります。

特に印象的だったのが、
妊娠初期(5週目)の患者さんのケースです。

それまで問題なかったのに、定期健診で歯ぐきを確認すると、

  • 歯ぐき全体が赤く腫脹
  • 軽い刺激でも出血

という典型的な妊娠性歯肉炎の状態でした。

専門的なクリーニングを行い、負担の少ない磨き方を一緒に調整したことで、
炎症は少しずつ軽減し、悪化をくい止めることができました。
ただし、妊娠中はホルモンの影響が続くため、
完全に落ち着くまで時間がかかるケースも珍しくありません。

このように、妊娠中のお口のトラブルは誰にでも起こり得ますが、
適切な対応をすれば「悪化を防ぎ、安定させる」ことは十分可能です。


妊娠中にできるセルフケア

ポイントは「無理せず、やさしく、継続する」です。

1)優しいブラッシング(ポイントは“力を入れない”)
歯ぐきが腫れていても、出血しても優しく磨く。磨くことをやめないことが重要です。

2)歯間ケア(フロス・歯間ブラシ)
歯周病菌は“歯と歯の間”に最も多いため、ここを清掃するだけで炎症がぐっと減ります。

3)つわりで歯磨きが難しいときは「最小限」でもOK

  • ミントを避ける
  • 小さいヘッドの歯ブラシ←乳児用ベビー用でもOK
  • 舌や上顎にハブラシが当たらないようにする←歯だけ磨くイメージ
  • だめな日は「うがい」でOK (高速うがい推奨!)

4)間食が増える場合は「中和」を意識
食後すぐの水うがいは有効です。

【効果的な高速うがい

・口に含む水の量はおちょこ1杯程度のごく少量

・できる限り強く、歯にぶつけるように、歯間に届くように。

高圧洗浄のイメージです。ですが、これは最終手段です。

歯磨きできそうな時は、簡単にサッとでも良いのでブラッシングしてあげましょう。ハブラシに勝るものはありません。


歯科医院で行うプロフェッショナルケア

妊娠中の歯科治療は 国際的にも「安全」 とされています(ACOG・ADA・WHO)。

推奨されるケア:

  • 歯石除去(スケーリング)
  • 歯肉炎・歯周病の治療
  • むし歯治療(必要な場合は麻酔も可)
  • ブラッシング指導

受診のおすすめ時期:
妊娠中期(16–28週)
体調が安定しており治療もしやすい時期です。

ただし、痛み・腫れ・出血が強いときは、時期に関係なく受診してください。

Q1. 妊娠中でも歯科治療はできますか?

はい。妊娠中の歯科治療は国際ガイドラインでも「安全」とされています。つらい症状があれば、我慢せず受診してください。

Q2. 歯ぐきの出血があっても磨いていいの?

大丈夫です。軽い出血は「炎症のサイン」です。やさしく磨くことで改善していきます。

Q3. 妊娠中に歯周病だと赤ちゃんに影響する?

早産・低体重児出産との関連を示す研究が複数あります。完全な因果関係ではありませんが、予防とケアの価値は高いとされています。

Q4. つわりで磨けないときはどうすれば?

ミントを避ける、子ども用歯ブラシを使う、できない日は「うがいだけ」でもOKです。

Q5. 受診のベストな時期は?

妊娠中期(16〜28週)が最も受診しやすいです。ただし痛み・腫れがあればいつでも受診を。

まとめ

妊娠中は、お口の環境が大きく変化します。
歯ぐきの腫れや出血は、ママが悪いわけではなく、妊娠に伴う自然な変化です。

しかし、科学的には歯周病が妊娠トラブルと関連する可能性が示されているため、
「放置しない」ことが、ママと赤ちゃんの健康に直結します。

  • やさしいブラッシング
  • 歯間ケア
  • 必要に応じた歯科受診

この3つを意識すれば、多くのトラブルは予防できます。

「妊娠中こそ、お口のケアが大切」。
無理のない範囲で、できることから始めていきましょう。

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▶︎ トップページ「むし歯ゼロ育児」も参考にしてください。